こんにちは。
今日は、長期留学(学生ビザの必要となる13週間以上の留学)のご相談をお受けする際に、最もよく聞かれる「公立と私立の違い」について書きたいと思います。今回は主に小学生を例に、費用面の差についてご紹介します(具体的なカリキュラムの違いなどについてはまた別にまとめます)。中学・高校生の場合は、下記に提示した費用よりも留学生の学費はさらに高額になります。
数でみるクイーンズランド州の私立と公立の状況
関東や関西圏の大都会を除けば、日本では小学校から私立という選択肢はそんなに多くありません。
しかし、オーストラリアには、非常に多くの私立一貫校(幼稚園から高校まで)と公立があります。例えばこのクイーンズランド州の数字を確認すると、公立小学校922校、私立小学校361校(ともに2021年現在)となっており、クイーンズランド州全土でみても公立の半数近い私立小学校が存在し、小学校から私立ということは珍しくありません。
また、当然ながら私立は都市部に集中していますので、ブリスベンやゴールドコーストなど、留学生が多く滞在するエリアに限定すると、私立と公立の数の差はさらに比率が近くなります。また、公立の中でも留学生(留学生本人の学生ビザで留学する場合)が通える公立は限られているという事実も含めると、ブリスベンやゴールドコースト周辺であれば、選択肢として考えられる公立と私立の数はほぼ同数であると言えます。
留学生にとって最大の違いは何といっても「学費の差」
では、何が違うのかというと、感覚的には、日本で感じる私立と公立の差に変わりはありません。設備やカリキュラムに特徴があったり、アフタースクールなどの課外活動の充実、スクールバスや制服などの「私立らしさ」は当然あります。
ローカル生や就労ビザなどの親に付帯してくる外国人の子ども(例外あり)については、当然ながら公立は「無料」です。日本のように学区が定められており、原則として居住区の学校に通学することになります。
しかし、留学生として通学する場合は、クイーンズランド州の場合は、公立小学校でも年間約15,000ドルの学費が発生します。
私立の場合、ローカル向けの学費は年間約5,000ドルから20,000ドル超えまで学校によって様々ですが、留学生として通う場合の学費は、こちらもローカル生とは区別されており、ローカル生の学費と比べて2倍から3倍に設定されています。
(実例)
私立K小学校
ローカル向け授業料年間約6,000ドル、留学生向けの学費年間約18,000ドル(約3倍)
私立S小学校
ローカル向け授業料年間約14,000ドル、留学生向けの学費年間約28,000ドル(約2倍)
留学生が通うにあたり、公立より安い私立はないため、例えば、最も安く通える私立と公立を比べた場合、2,000~3,000ドル程度の差額が出ます。これはあくまでもお子さま1名の場合ですので、ご兄弟で通学される場合は、公立と私立の年間当たりの支出の差はさらに大きくなります。
留学生としての学費の差よりも、実際に「差」がある
長期留学を検討されている方にとっては、学費を含め生活費や家賃など様々な費用を可能な限り抑えたいと考えられると思います。単に1円でも安くしたい場合には、上記の結果を踏まえて、公立を選択されるのがベストです。
むしろ公立であってもスポーツや第二言語などで公立ならではのカリキュラムで特徴を持つ学校も多くあります。追ってご紹介しますが、とにかく優れたプログラムを実施している公立も多いです。また、日本でもそうであるように人気の学区や優秀な学区など、それぞれの特色もありますので、それらを見極めながらお子さまに合った学校選びを進めることができます。
しかしここで見方を変えると、公立というのは、ローカル生にとっては誰でも「無料」で通える学校です。そこに、留学生という理由だけで年間約15,000ドルの学費が課されます(もちろん、ローカル生の親は国に税金を納めているので巡り巡ってその学費の一部は負担していると言えるかもしれませんが)。
誰でも無料で通える公立に日本からの留学生として年間約15,000ドルを支払うか、設備やカリキュラムがより整っている私立(特に私立は競争が激しいため常に進化している)に年間約20,000ドルを払うかということを検討する場合、ここでの差額は5,000ドルです。
しかし、仮に私立A小学校のローカル向けの学費が10,000ドルだった場合、ローカル生から見た公立と私立A小学校の差額は年間約10,000ドルです。この数字が実際の差額と言えます。「差額=価値の差」ではないものの、そこには、必ず一般論として学費の差に裏付けられただけの付加価値が私立にはあると思います。
このような状況を面談等でご説明させて頂くと、限られた留学生活をより充実させるという目的でも、公立ではなく私立を選ばれる方が多いのが現状です。
公立と私立の学費の差をどこにどう使うか?
一方で、その差額を私立に支払うのであれば、通学先は公立にし、その分少しでも長くオーストラリアに滞在したいと考える方も、その分を現地での習い事やオーストラリアでしかできない他の体験に使いたいと考える方もいらっしゃいます。
時間やお金に制限がない場合を除けば、限られた予算や留学期間の中でどう過ごしたいかという点は、公立か私立かを選ぶ際のポイントになります。学費やNAPLAN(オーストラリアの全国統一学力テスト)の結果など、数値化された学校の評価も参考にしながら、その裏に、見た目には測れない留学中の価値もあることを理解し、時間・経験・お金などのバランスの中でどこにプライオリティーを置くのかをきちんと見極めて検討する必要があります。
「留学した」という事実ではなく、留学中に「どのような時間を過ごすか」ということを考えて学校選びを
親子留学や大人の語学留学などで、皆さまと面談を繰り返しさせて頂いている中で、「留学=海外に行くこと」そのものが目的になっている方もいます。
それはそれで勇気のいることであり、素晴らしいことなのですが、せっかく日本を飛び出してくるのであれば、留学中に何をしたいか、何を学びたいか(英語が目的ではなくても全然OKです)、その中身を充実させる方法をもう一歩踏み込んでイメージしてみると、こういった学校選びのシーンでも、ベストな選択に近づけるのではないでしょうか。